監督は漆原友紀「蟲師」のアニメ化で知られる長濱博史。
長濱はロトスコープと呼ばれる実写映像をアニメに起こす技法を用いて、
「惡の華」の映像化に挑む。
キャラクターデザインをはじめ、ロトスコープで作られた人物たちがどう動くのかは、初回放送まで未発表とされている「惡の華」。
そこでコミックナタリーは高まる期待を胸に、押見と長濱に話を伺うべく対談の場をセッティングした。
観た人の脳裏にこびりつく作品を、と気炎を揚げるふたりの目論見を探っていく。
取材・文/井上潤哉 編集・撮影/唐木元
◆「これ、そのままアニメ化したって誰も喜ばない」とオファーを断った(長濱)
──本日は「惡の華」のアニメ化というめでたいニュースを記念して原作者と監督のおふたりにおいでいただきましたが、
まずは押見さん、アニメ化の話を初めてお聞きになったときはいかがでしたか。
押見修造 想像もしてなかったのでびっくりしました。
このマンガって登場人物はずっと思い悩んでるし、動きまわることもしないし、
アニメ化する作品として向き不向きで言ったら、とにかく向いてないんですよ(笑)。
長濱博史 わかります。
実は僕、監督のオファーを一度お断りしてるんですよ。
「これアニメ化したって、原作ファンも押見先生自身も、誰も喜ばないと思いますよ。
やるなら実写ドラマのほうがいいんじゃないですか」って。
押見 そうだったんですか。
長濱 ええ。
だって「惡の華」って読む人のパーソナルな部分に訴えかける作品じゃないですか。個々人の事情で思い入れを抱いたり、心が動いたりする作品だと思うんです。
それを髪の毛にツヤが入ってるような、
綺麗なアニメ絵にして見せたところで、「マンガ読んでるほうがいい」って言われて終わっちゃうと思ったんですよ。
──ではなぜ、お引き受けになられたのでしょう。
長濱 再びオファーをいただいたんですけど、そのときひとつだけ可能性はあるなとは思っていて。
それはさっき言った「実写なら」って話に結びつくんですが、ロトスコープを使えば面白く作れるかもしれない、と思いまして、それを提案してみたんです。
◆実写タッチなら、これは面白くなるんじゃないかと直感した(押見)
http://natalie.mu/comic/pp/akunohana
※続く
の続き
──ロトスコープというのは、馴染みのない読者も多いと思うのでご説明いただきたいのですが。
長濱 簡単に言うと実写トレースですね。
まず実際の人間に演技してもらって撮影して、それを1コマ1コマトレースして、アニメに起こす、という技法です。
当然ですけど人物の造形や動きが、ものすごく写実的に描かれるんですよ。
TVアニメでやるには珍しいやり方で手間もかかりますし、制作会社がOK出すかどうかはわかりませんでしたが、それなら原作とはまた別なものとして、視聴者に受け入れられるんじゃないかと。
押見 僕はロトスコープで撮ると聞いて、キアヌ・リーブス主演の「スキャナー・ダークリー」とか、昔の「白雪姫」みたいなディズニーアニメのイメージが浮かんだ、というかそれくらいしか知識がなかったんですが。
長濱 「しか」じゃないですよ。普通はそこまで知らないですから。
押見 僕の絵がアニメ絵になって動くというんじゃなくて、まったく違う実写タッチの絵になることは理解できたので、これは面白くなるんじゃないかと直感しました。ただ、これ(ロトスコープ)大変じゃないですか?
長濱 物量との戦いが一番大変なところですね。
とにかく必要なカットの枚数が膨大で。
しかも普通のアニメならスケジュールが切迫してくると、キャラの動きを省略してカットを減らすことができるんです。
でもロトスコープはすでに実写を撮り終えているので動きを止めることができないし、あまりに写実的なので間を省略すると不自然になるんですね。
だから、これはもう頑張って描くしかない(笑)。
──そもそも実写ないしは写実的な絵がマッチするだろうというのは、なぜ思われたんですか。
長濱 これは勝手な想像ですけど、先生は恐らく「惡の華」を描く上で、何か違うものを見てらして、それをマンガという形に変換して表現しているんじゃないかと思ったんです。
だから僕らがそれをただのアニメにしても、あまり意味は無い気がしたというか。
◆ある原作を僕は脳内で見てきて、それをマンガに起こしている感覚(押見)
押見 この話は以前もしたのですが、監督が
「見たものをマンガに落とし込んでるんですよね」って言ってくれたとき、どうしてわかったのだろう、その通りだ、と。
驚くとともにすごく納得がいったんです。
長濱 やっぱり。
押見 「惡の華」は、僕には造物主の感覚はないんですよね。
もう原作みたいなものが僕の頭の中にあるんですよ。
それを僕は脳内で見てきて、見たものをマンガに起こしているという感覚……これ伝わってますか?(笑)
──押見さんの創作というわけではなくて、すでに誰かが作った作品というか記憶として押見さんの脳内にあって……。
長濱 それを先生はマンガに、僕たちはアニメにすると。
押見 その感覚を理解してもらえているから、とてもしっくりくるんですよね。
ほかにも監督とは作品の核心の部分をわかりあえていると感じたことが何度かあって。
──それは具体的には。
押見 最初お会いしたときに「この作品がやりたいことってつまり『太陽を盗んだ男(※1)』でしょ」って言われて。
僕としてはそれだけで、監督が「惡の華」を正しい方向に導いてくれるって確信を持ちました。
あと「このアニメで視聴者に傷痕を残したい」とおっしゃっていたのもまったく同意ですし。
そういう信念的なものがわかってもらえていれば、あとは言うこと無いです。
長濱 いやー原作者の方にそこまで言っていただいて、ありがたいことです。
※1 1979年製作の日本映画。長谷川和彦監督、沢田研二主演。ダメ教師が原子力発電所からプルトニウムを盗み出し、自作の原爆で政府に幼稚な要求を突きつける。目的を持たない男が、被曝により身を滅ぼしながら暴走していく。
※続く
の続き
~中略~
◆恐らくたくさんの人をふるいにかけることになると思うんです(長濱)
──第1話放映までキャラクタービジュアルが公開されない方針と伺っていますので、どんなアニメになるのか、ほんとに想像もつかないですね。
押見 ちなみに僕、ロトスコープのテストで実験台になってるんですけど、自分の仕草なんかがそのままアニメになるので、すごく驚きました。
生きている人間の動きの癖が露骨~に出るんですよ。
長濱 役者さんに初めて見せたときの反応がいちばん面白いんですよ。
実写を撮影したあと「アニメになるとこうなります」って見せたとき、皆一様に「え、そのまんまじゃないですか!」と驚くんです。そう驚かれるほどのナチュラルな雰囲気が、「惡の華」には必要だったんですよ。
やっぱりいかにもなアニメキャラじゃなくて、人間が映し出されてほしかったから。
──前情報なしに今期のアニメ1話をチェックするぞーって見た人は衝撃を受けるでしょうね。
長濱 オープニングの音楽から1話のストーリーの構成から、
「なんじゃこりゃ」ってなるように作ってますから、恐らくたくさんの人をふるいにかけることになると思うんです。
「気持ち悪いからもう見ない」「こういうの大嫌い」って人も出てくるでしょう。
──いいんですか(笑)。
長濱 いいんです。それで、たとえばBlu-rayとかDVDが出たとき「あの気持ち悪いやつか」って見返したら面白かったとか、本屋さんで原作の単行本を見つけて
「なんだアニメとぜんぜん違うじゃん」って手に取ってくれたりとか、そういう引っかかりを見た人に持ってもらえたら、僕らとしては成功だと思っていて。
押見 監督がおっしゃっていた、傷痕を残すとはまさにこのことですよね。
長濱 一瞬でもいいから「ん?」ってなってほしいんですよ。
その「ん?」のために作ってる。
押見 以前高校生くらいの女の子から「中学生くらいのときに読んでて、わけわかんないなって思ってたんですけど、高校生になって読み返してみたら、すごく面白かったです」っていうファンレターをもらったことがありましたね。
長濱 まさにそれです。
「わけわかんない」でも「気持ち悪い」でも、誰かに刺さってほしい。素通りされるのがいちばん悲しいですから。
◆確実に視聴者を殺しにかかっている、衝撃的な仕上がりです(押見)
──そんな長濱さんが原作を読んだとき感じた魅力は、どんなところでしたか。
長濱 人間の心の移ろいやすさがちゃんと描かれているところ。物語を作っていく身としては、アニメの場合は特に、キャラクターをひとつの色に規定したがるもんなんです。
「こいつはこれが許せない奴」「こいつは彼女を亡くしたトラウマを抱えた奴」。
そうしてわかりやすく記号化しておかないと話を進めづらいというのは、確かに、ある。
※続く
の続き
押見 アニメは大勢で作るから、スタッフ間で共有しやすいというのもありますよね。
長濱 でも実際の人間というのはどうですか。
トラウマがあってもちゃんと忘れていけるし、気質だって上書きされていく。
そうやってどんどん変化していくのが人間じゃないですか。
その意味で「惡の華」はキャラを記号化せず、人間が描かれてる。
押見 ありがとうございます。
でも一方で、その人間の本質みたいな部分はそう簡単に変わらないのも事実なんですよね。
WEBの掲示板なんかを見に行くと「佐伯さんがヤンデレ化した」「キャラがブレてる」とか言われてるんですけど、彼女は最初からそういう部分もぜんぶ内包していて、基本的に本質は大きく変わっていない。
彼女が恋愛を突き詰めていった結果、ああ変化していったんです。
──そろそろ時間となってしまいました。
初回放送を前にざわざわしているファンが多いと思いますので、
最後にそうした方々へメッセージをいただけますか。
押見 「惡の華」を他人事ではないと感じてくれている人には、絶対面白いアニメだと保証します。一方で「仲村さんハァハァ」みたいな、キャラ萌えみたいな感じで読んで下さっていた方は、裏切られるんじゃないかな。
長濱 正直、普通のアニメとは違うので、誰しも絶対に面白いと思えるものかどうかはわかりません。
でも第1話を見て「また見たい」と思った人は、その方々のことは最終話まで絶対に裏切らないものになっていると思います。
押見 本当、衝撃的な仕上がりですから。
「僕もこう描けばよかった」とか悔しくなる場面がたくさんあります。
春日と仲村が教室で暴れる回とかすごいですよ。
マンガよりすごくて、僕は見るたびに泣いちゃいます。
長濱 あの回は我ながら、いいものが出来たと思っています。
役者たちも、原作に出てくる表情をしていて、完全に乗り移ってますね。
押見 比喩表現としてですけど、僕は「惡の華」は読者を殺すつもりで描いてるんです。
まあアニメも確実に殺しにかかってる気がしましたね。
惨殺です、視聴者全員(笑)。
長濱 ははは、「傷痕残す」どころか、惨殺。
押見 ヌルいもの描いてなかったな俺、って思い直しました。
※以上
中途半端な終わり方になるのは始まる前からわかってるのに
わかってないねぇ
社名が変わったり蟲師の作監が移籍したりしたが、
解散はしてないぞw
原作ファンは不安がってるが
つまり糞蟲師だな
実写の動きのトレース
終わりにしようぜ
作者恥ずかしくないの?
って違うのかよ
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